2 彫漆と木彫漆塗

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2 彫漆と木彫漆塗

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堆朱屈輪文香合(部分)
堆朱屈輪文香合(部分)

屈輪文香合(部分
屈輪文香合(部分)

 中国からもたらされた彫漆とは、木製の器胎の上に色漆を幾重にも塗り、その上から文様を彫り出す技法です。色の違いにより、堆朱、堆黒などの種類があります。漆の積層は厚く、彫り出した時のアクセントとして色の異なる漆層を交えるなど手が込んでおり、鎌倉時代に日本にもたらされ、珍重されました。
 鎌倉彫では、彫漆のように漆を塗り重ねるのではなく木製の器胎そのものに花鳥文や屈輪文などの中国風の文様を彫って、その上から漆をかける技法を用いて、彫漆の風合いを再現しています。
 彫漆と鎌倉彫の文様を見比べてみましょう。漆層の有無がはっきりと見て取れ、彫漆と鎌倉彫とでは技法が全く異なっていることがわかります。
 器胎を彫って漆をかける木彫漆塗であることで、鎌倉彫は、漆層を彫り込む彫漆の精緻で厳しい作風とは異なる、木彫ならではの風合いを獲得しました。彫りの深さの加減や刀を入れる角度の変化など、彫りの刀技が生むやわらかな立体感が鎌倉彫の魅力です。