広重晩年の傑作の一枚。彼は武蔵や相模を旅して、多くの名所旧跡をスケッチしており、能見堂から見た金沢八景も肉筆画として数点残されている。本図では、そうしたスケッチを基にして夜景に変えて描いている。色彩は全体を墨と藍で統一し、中央上部には満月が上がり、近くには雁が列をなして飛んでいる。叙情性の高い作品。