広重が最初に出した風景画シリーズがこの「東都名所」で、俗に一幽斎描きと言う。本図は、天と川の藍のぼかし、大きな橋桁を通して薄墨と紅の筋雲の向こうに月が上り、黄昏時の物寂しさが伝わる。広重(1797〜1858)は、「東都名所」で注目され、続いて「東海道五拾三次」55枚揃が人気となり風景版画家の地位を築いた。