展示

神奈川県庁新庁舎敷地内から出土した切石積みの壁

今月の逸品」では、学芸員が交代で収蔵資料の魅力を紹介します。

2018年10月の逸品(展示期間:常設 ミュージアムトーク:10月17日)

神奈川県庁新庁舎敷地内から出土した切石積みの壁

神奈川県庁新庁舎敷地内から出土した切石積みの壁

神奈川県庁新庁舎敷地内から出土した切石積みの壁(当館所蔵)

神奈川県庁新庁舎は、当館から徒歩10分弱の距離にある、坂倉準三(1901~1969)設計で1966(昭和41)年に竣工したモダニズム建築である。この建物が建っている敷地は、横浜・関内の外国人居留地に隣接する日本人街にあたり、幕末から渡邊福三郎(1855~1934)が経営する「石炭屋」(のち「渡邊合名会社」)などが立地していた。1859(安政6)年の横浜開港直後から、石炭や海産物などの輸出を手がけた福三郎は、のちに不動産や金融に事業の軸足を移しつつ、横浜の有力な商人のひとりとして活躍した。

常設展示「テーマ4」の展示室のいちばん奥に展示されている切石積みの壁は、2014(平成26)年に新庁舎敷地内で実施された発掘調査で出土したもので、「石炭屋」の遺構と考えられている。「房州石」と呼ばれる千葉県鋸山産の凝灰岩で造られた壁は、古写真や当館が所蔵する「横浜諸会社諸商店之図」に描かれた明治20年代の店舗配置から、敷地内に建てられた倉庫の壁である可能性が高い。火災によると思われる赤黒い変色が確認されることから、1923(大正12)年9月1日の関東大震災で倒壊・炎上したのであろう。

関内の旧日本人街地区で初めて実施された本格的な発掘調査で出土した近代横浜の歩みを示す「生き証人」である。(丹治 雄一・当館主任学芸員)

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