展示

太刀 銘備前国長船住左近将監長光造 正応二年己丑六月日

今月の逸品」では、学芸員が交代で収蔵資料の魅力を紹介します。

2018年11月の逸品(展示期間:10月17日~12月27日 ミュージアムトーク:11月21日)

太刀 銘備前国長船住左近将監長光造 正応二年己丑六月日

太刀 銘備前国長船住左近将監長光造 正応二年己丑六月日

黒漆塗拵

室町幕府12代将軍足利義晴(1511~1550)から上野国(こうずけのくに)新田金山城主由良(横瀬)成繁(1506~1578)に与えられたとの伝承を持つ太刀と拵(こしらえ)です。由良氏は上野国新田荘を拠点とした武士で、成繁の時代には新田金山城(現在の群馬県太田市)にあって一大勢力を形成しました。
太刀は、鎌倉時代、備前国の長船(おさふね。現在の岡山県瀬戸内市)を拠点に活動した刀工長船長光の作で、正応2年(1289)の銘を持ちます。刀身の表には、伊豆箱根権現や三島明神など各所の神名を刻み、裏には、龍が宝剣に巻き付く、いわゆる倶利伽羅文をあらわしています。龍が刃の方に腹を張る「孕み龍」は長光の特徴ともされます。刀身には研ぎ減りが見られ、長光独特の巧みな地映りや変化に富む刃紋といった作風はわかりにくくなっていますが、伸びやかな姿は品をたたえています。
拵は革包、金物、柄、鞘巻ともに黒漆をかけ、鍔や切羽などの金具も黒漆で仕上げる丁寧な造りです。こうした黒漆塗りの太刀拵は太刀拵の一般的な様式として類例があることから、足利義晴から由良成繁に与えられた当時の姿を残しているものと考えられています。(小井川 理・当館学芸員)

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