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旧横浜正金銀行本店本館に使用された神奈川県産建築用石材「白丁場石」

今月の逸品」では、学芸員が交代で収蔵資料の魅力を紹介します。

2019年11月の逸品(展示期間:~12月下旬 ミュージアムトーク:11月20日)

旧横浜正金銀行本店本館に使用された神奈川県産建築用石材「白丁場石」

旧横浜正金銀行本店本館に使用された神奈川県産建築用石材「白丁場石」

当館建物で使用されている「白丁場石」

現在、当館の旧館として保存活用されている旧横浜正金銀行本店本館は、1904(明治37)年7月に竣工し、重要文化財・史跡に指定されている日本の近代建築史を語る上で欠かすことのできない重要な建築です。その構造は、「補強煉瓦造・石造」と表現されるように、煉瓦と石材と補強用の鉄材からなっていますが、外壁部分はすべて重厚な石積みです。

この画像は当館建物の外壁のある一部分にフォーカスしたものです。建物竣工時に発行された『横浜正金銀行建築要覧』という資料には、当館の外壁に茨城県産花崗岩「真壁石」と岡山県産花崗岩「北木石」、神奈川県産デイサイト「白丁場石」の3種類の石材が使用されていたとの記述があります。これら3種類の石材のうち、画像でご紹介したのは、神奈川県産デイサイト「白丁場石」です。当館建物では、おもに2階と3階の平壁に使用されています。

「白丁場石」は、足柄下郡湯河原町鍛冶屋で採掘され、特に明治時代中期から大正時代にかけて、洋風建築の外壁用石材として広く使用されていた石材でした。横浜正金銀行本店以外の使用事例としては、日本銀行本店本館(1896年竣工、重要文化財)、旧東宮御所(現迎賓館赤坂離宮、1909年竣工、国宝)などを挙げることができます。

では、「白丁場石」はなぜこのように近代洋風建築で広く使用されたのでしょうか。その理由としては、①花崗岩と併用して違和感のない白色の石材であったこと、②花崗岩と比して加工コストが低廉であったことを挙げることができます。色彩と低廉な加工コストで花崗岩を補完する役割を担った異色の石材「白丁場石」。「今月の逸品」講座では、常設展示で展示中の関係資料も見ながら、詳しく解説します。(丹治 雄一・当館企画普及課長、学芸員)

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