絵が上手くなる!

絵が上手くなる!(令和2年6月10日公開)


(パンチの守)うーむ、絵を描くというのは難しいのう…

(犬のカメ)唐突にどうしたんですか、パンチの守さま。

パンチのかみいやいや、ワターシの生みの親のワーグマンさんのように絵をすらすらと描いてみたいと思って試してみたんじゃが、これがなかなかうまくいかないものじゃなぁ。

カメ何事もいきなりというのは難しいと、かながわけんぱくの学芸員(TT)も言っていましたよ…ですが、このカメ、良い情報を持っております!

パンチのかみ良い情報とはどのようなものじゃ?

カメその学芸員から聞いたのですが、この後登場する絵の練習をこなしていくと、あらま、びっくり!次第に絵がうまくなるということですよ。

パンチのかみほんとうかのう? うそではないのか?

カメわたしも最初はそう思ったのですが、この方法で勉強して、世界的に有名になった画家がいるのだそうですよ。

パンチのかみじゃったら、とっても難しいんではないのかな?

カメそれがその方法、小学生向けの教材から構成されているらしいんですよ。

パンチのかみなんじゃと? そんな教材、知らなかったのう!

カメ確かに、ご存じないかもしれません。かくいうわたしも知らなかったのですが、100年以上前の教科書なんだそうです。まずは線をひくことからはじめて、勉強できるようですよ!


 
 さぁ、ここからは4月25日開幕予定だった「明治錦絵×大正新版画」(特設サイト公開中 https://ch.kanagawa-museum.jp/hanga/)担当学芸員の(TT)がお送りします。

 鉛筆でもシャーペンでも筆ペンでも何でも良いです。自分の描いてみたい筆記具と紙を準備してください。最初はどれが良いかもわかりませんよ。てきとーで。後で進んでいくうちに、これがいいな、あれがいいな、とわかってくると思いますよ。

 ほんとの初歩の初歩からやりますから、色はあえてつけませんよ。。。色々なところで塗り絵が流行っているみたいですから、うちでは色は無し!モノクロームの美ですよ!

 で、やり方は簡単♪

 お手本を出しますから、お手本をまねて描いてみましょう。プリントアウトできる人は、プリントアウトして、なぞることをおススメします。何度かなぞったら、今度はお手本を横に置いて、何も描いていない紙に、お手本そっくりに描いてみましょう。その次に大きさを変えたり、モチーフを変えたり、応用させてみましょう♪

 さぁ、レッツトライ!

※本ホームページは、科学研究費基盤研究(B)「明治期図画手工教科書データベースの充実と活用に基づく教科横断的学習の史的研究」(研究課題/領域番号19H01677 研究代表者赤木里香子 研究分担者角田拓朗)の研究成果の一部です。

【目次】

レッスン1 線を引いてみよう ❶

レッスン2 線を引いてみよう ❷

レッスン3 モノのかたちをとらえよう ❶ 

レッスン4 モノのかたちをとらえよう ❷

レッスン5 立体的に描いてみよう ❶

レッスン6 立体的に描いてみよう ❷ 

レッスン7 植物を描いてみよう ❶ 

レッスン8 植物を描いてみよう ❷ 

レッスン9 動物を描いてみよう ❶ 

レッスン10 動物を描いてみよう ❷

レッスン11 風景を描いてみよう ❶ 

レッスン12 風景を描いてみよう ❷ 

レッスン13 人を描いてみよう ❶ 

レッスン14 人を描いてみよう ❷ 

レッスン15 最終回 顔を描いてみよう

レッスン1 線を引いてみよう ❶ 

 絵を描く―これは線をひくことにはじまるといってよいでしょう。まっすぐ。まるく。かくっとおれる。短く。長く。く~るくる。色々な線がありますよ。それらが組み合わさって「絵」になるんですよ。
 だから、線、大切ですね。でも、ひいてみてください。簡単だ~という人もいるでしょう。けれども、難しいな、と感じている人もいるでしょう。
 なにしろ、これが基礎練習です。
 お手本に習って、色々な線をひいてみてください。

線の図その1

 

線の図その2

 

線の図その3

 

手本史料:小学普通画学本、小学西画初歩

レッスン2 線を引いてみよう ❷ 

 線を引くの第2回。
 ちょっと複雑なお手本をそろえてみました。
 コツは、マス目ですよ。マス目。マス目を意識して線をつなげると、大きさが整うわけですね。あら不思議。曲線もマス目を意識して、補助線を意識して、ゆるやかなカーブでつなぐ。そうすると、ほどよい弧が描けるわけです。あら、できちゃった、という声がきこえてきますね。そう、レッツトライ!

マス目を使った線の図その1

 

マス目を使った線の図その2

 

マス目を使った線の図その3

 

マス目を使った線の図その4

 

マス目を使った線の図その5

 

手本史料:小学普通画学本、小学西画初歩

レッスン3 モノのかたちをとらえよう ❶ 

 線を引くことができたかしら?次のステップは、モノを描くことです。
 「難しいんでしょ?」という声が聞こえてきますね。いえいえ、お手本をご覧ください。
 最初から難しいかたちを描こうとするから、難しくなるんですよ。簡単なかたちから、始めましょう。ステップバイステップです。単純な図形も、よく見ると、前回の線をつなげることと同じです。お手本に出しているのは、私たちが日常的に使う道具です。明治の教科書だから、古いモノばかりですけどね(笑)でも、同じやり方で描けますよ。さあ、レッツトライ!

道具を描いた図その1

 

道具を描いた図その2

 

道具を描いた図その3

 

ドアや窓や家を描いた図

 

手本史料:小学普通画学本、小学西画初歩

レッスン4 モノのかたちをとらえよう ❷ 

 モノのかたちをとらえるの2回目。どうでしょう、ちょっと自信がつきません?
 では、今回のお手本です。平べったい絵ばかりですね。平面図ですね。子供たちが描く絵はこういう種類が多いですね。いいんですよ。こういうのが楽しいですし、ここから成長するのです。さぁ、楽しんで描いてみましょう!

道具を描いた図その4

 

道具を描いた図その5

 

道具を描いた図その6

 

道具を描いた図その7

 

手本史料:小学普通画学本、普通小学画学楷梯

レッスン5 立体的に描いてみよう ❶ 

 レッスン5、どんどん「絵」になっていきますよ。ここがコツかな、というところ。立体です!「あ~、絶対に難しい!」と嘆いているあなた!大丈夫、お手本をよく見て。難しい理論はさておき、箱っぽく描くコツ、斜めから箱をみて斜めの線をつかって、描くコツ、見えてきません?お手本をなぞって描けたら、今度はお手本を見ながら描く。次にお手本を見ないでそっくりに描く。そしたら、大きさを変えて、お手本のような立体を描いてみて。
 ほら、もうコツをつかんだはずですよ!

立体を描いた図その1

 

立体を描いた図その2

 

立体を描いた図その3

 

立体を描いた図その4

 

手本史料:小学普通画学本、普通小学画学楷梯

レッスン6 立体的に描いてみよう ❷ 

 レッスン5で脱落した人はいないかな?「やっぱり難しい!」という方!それは味気ない形だったからかもしれません。もっと興味のあるモノ、知っているモノならば、できちゃうかもよ!?というわけで、今回のお手本はこちら!
 お手本のひとつには、影が入っていますね。影、そう、これ、立体っぽく見える大切なコツ!光があたる方向を意識して、同じ側にちょこっとずつ、うっすらと入れていくのがいいですよ。

立体を描いた図その5

 

立体を描いた図その6

 

球体を描いた図

 

櫛と鏡を描いた図

 

立体を描いた図その7

 

手本史料:小学普通画学本、普通小学画学楷梯、訂正浅井自在画臨本

レッスン7 植物を描いてみよう ❶ 

 レッスン7、全15回のなかばにさしかかりました。いよいよ本格的な「絵」を描くステップです。「自然こそ絵の先生だ」みたいなことをいった画家は誰でしたっけね?いっぱいいたような気もしますし忘れましたけれども、画家さんの多くは植物をものすごくよくスケッチしますね。身近だし、美しいし、描いていると気持ちいいんでしょうね。
「でも難しいんでしょ?」というそこのあなた!お手本をよく見て!今まで学んだことからできますよ。かたちを全体的にざっくりととらえて、マス目に置いてみて、それぞれの頂点の線を結ぶ、と。そうすると、あらびっくり、できあがり!葉っぱも、花も、木も、そういう単純な形からはじめてみましょう。そして徐々に複雑に、ね。さあ、レッツトライ!

植物を描いた図その1

 

植物を描いた図その2

 

植物を描いた図その3

 

手本史料:小学普通画学本、訂正浅井自在画臨本

レッスン8 植物を描いてみよう ❷ 

 植物の回第2回目。
 前回は単純なかたちばかりでしたね。そう、平面図的なお手本でした。今回はそれっぽいかたちの3つのお手本です。「うそつき!難しすぎだよ!」という声が聞こえてきますね。
 いや~、「難しい」は「楽しい」ですよ♪でも、皆さんは、もう線をひくとかのコツをちょっと身につけたでしょ?その応用ですよ。じっくりお手本を見てください。ちょっと葉や茎を曲げてみると、ホンモノっぽく見えるんだとか、上手く見えるコツがたくさんです!

植物を描いた図その4

 

植物を描いた図その5

 

植物を描いた図その6

 

手本史料:小学習画帖、普通小学画学楷梯、訂正浅井自在画臨本

レッスン9 動物を描いてみよう ❶ 

 前回、難しすぎて、心が折れたあなた!ま、そういうこともありますよ♪
 そんなに落ち込んでいない?じゃ、簡単でしたね?
 というわけで、さらに目先を変えて、次は動物です!こちらも線からはじめる動物にしましょう。で、前回にも説明なしでお手本をいれておきましたけれども、筆で描く先生用のお手本を入れておきました。先生たちが教えるのに、どう教えれば良いのか、という本が明治の頃にもあったのですよ。その動物版も入れておきますから、参考にしてくださいね♪

蝶を描いた図その1

 

蝶を描いた図その2

 

動物などを描いた図

 

亀と金魚を描いた図

 

犬を描いた図

 

動物を描いた図

 

牛を描いた図

 

手本史料:小学習画帖、小学毛筆画、訂正浅井自在画臨本

レッスン10 動物を描いてみよう ❷ 

 動物の回第2回。
 動物といっても、いっぱい種類がありますね。鳥や魚、昆虫も。明治の頃の教科書には、本当にたくさんお手本があるのです。実はその頃日本では眼にすることの出来ない動物もたくさん「図画」の教科書に載っていたんです。まるで百科事典のようです。ちょっと難しいかもしれないですが、その種類のお手本をいれておきますね♪明治の頃の子供たちのなかには、この絵を見て、動物や植物に憧れて学者になった人もいたんでしょうね。

獅子を描いた図

 

トナカイを描いた図

 

鳥を描いた図その1

 

鳥を描いた図その2

 

兎を描いた図

 

鳥を描いた図その3

 

鳥を描いた図その4

 

手本史料:小学普通画学本、小学習画帖、小学西画初歩、中等臨画、訂正浅井自在画臨本

レッスン11 風景を描いてみよう ❶ 

 レッスンはいよいよ後半、レッスン11です。次に風景にうつります。
 「風景を描いてみたかったんだよ」という声が聞こえてきます。屋外で風景をゆったりと描く姿、いいですね!心穏やかに風景を愛でる、描く、素敵ですね。「そのための基礎はどうなの?」というあなた!もう学んできたじゃないですか?パーツは、ここまでのところで学んできたわけですよ。さらに風景画っぽく見えるために、今回のお手本はこちら!樹木、家屋です。ちょ~っと古い家屋ですけれども、そこはそれ(^^;)さあ、レッツトライ!

風景画その1

 

風景画その2

 

風景画その3

 

手本史料:小学普通画学本

レッスン12 風景を描いてみよう ❷ 

 風景の回、2回目。
 風景らしさって何だろう。うーん、やっぱり空間の広がりだよね。
 この空間を描くっていうことは本当に難しいんですよ。でも、簡単にできるコツがあるんですよ。お手本を見て気がつきません?そう、道ですね。道をね、描き入れるんですよ。あるいは川とか水辺ね。そうすると、広い空間なのですね、ってわかるわけ。さぁお手本に習ってレッツトライ!

風景画その4

 

風景画その5

 

風景画その6

 

風景画その7

 

手本史料:小学普通画学本、小学西画初歩、小学画手本

レッスン13 人を描いてみよう ❶ 

 最終版です、人です。
 西洋では神がつくった人体こそ、美だと考えられているそうです。今でもそう考えられているようですね。美と感じるかどうかは洋の東西の違いなどがあるのかもしれないですけれども、ただ、人、人体を描く興味は、共通しているように思います。人の姿形を遺したいという思いが、絵画ないしは造形の根源的な欲求にあることは、間違いないでしょう。というわけで、人体です。まずはパーツからですよ。手足、眼、口、各パーツが描けるようになって、人体の全体の輪郭へと続いていきますよ。

目と唇の描写

 

手の描写

 

足の描写その1

 

足の描写その2

 

鉛筆を持つ手の描写

 

手本史料:小学普通画学本、普通小学画学楷梯、訂正浅井自在画臨本

レッスン14 人を描いてみよう ❷ 

 人の回2回目。
 今回は動きのある人物です。動いている人物を描くすごい絵師として、葛飾北斎が知られています。『北斎漫画』はその集大成ですね。でも、それとてある種のパターンを示しているわけです。最初から、ぱっと見てそのかたちを捉えられる人はそう多くはないです。「絵がうまくなる」というこのレッスンでは、最初からそのステージを目指してはいないですよ。その前のステップ、つまり人の動きのパターンを覚えましょ、ということ。これを知っていて、描くことができるだけで、「こいつ、できる!」となるわけ。さあ、今回もお手本に沿って描いてみましょうね♪

人体の描写その1

 

人体の描写その2

 

人体の描写その3

 

手本史料:小学普通画学本

レッスン15 最終回 顔を描いてみよう

 最終回です。涙涙の卒業課題です。
 ご存じでしょうか?当館は幕末明治に横浜で活躍した五姓田派という画家集団の作品を収集し、調査研究し、展覧会をおこなってきました。彼らの中心的な画家に、五姓田義松がいます。彼が教えた画家たちが、明治の頃、全国に散らばって絵の先生となって、今日に至る美術の基礎の基礎をつくっていきました。その五姓田の工房での絵の練習は、基礎をすっ飛ばした応用ばっかりだったようです。そこではお互いに向き合って顔を描き合ったようです。自画像もたくさん描きました。というわけで、最後のレッスンとして、自画像を描きましょう。鏡を見て、じっくりと自分の顔を見て、描きましょう。大丈夫、あなたが逃げ出さない限り、モデルは鏡の中にずっと居てくれますから(笑)いくつかお手本を示しますね。表情をつけてみると、のっぺりした顔にならないで描きやすいですよ。さぁ、最終課題、レッツトライ!

笑いの表情の描写

 

落胆の表情の描写

 

驚きの表情の描写

 

怒りの表情の描写

 

手本史料:五姓田義松 六面相 表情(笑い・落胆・驚き・怒り)

レッスン修了証

 各位

 たいへんに良く出来ました。頑張りました。
 このレッスンを通じて、ちょ~っとは絵がうまくなった!・・・はず。
 ここにあなたのレッスンが修了したことを証します。

 令和2年 神奈川県立歴史博物館

 というわけで、おめでとうございます。
 ただ、もちろん、これで絵がすべて描けるわけではないですよ~。
 でもね、ちょこっとコツはつかめていただければ幸いです。
 明治の子供たちはこうやって絵をステップバイステップで勉強して、ある子は絵が好きになったでしょうし、他の子は自由に描きたいと嫌いになったかも。でも、方法を教えもしないでうまいだ下手だもないもんだと思うのは、意地の悪い私だけ?
 昔はちゃんと絵の描き方、コツを教えていたわけです。それが必要だった世の中があったのです。その時代背景を知りたい人は、たとえば当館特別展図録『真明解・明治美術』や拙著『絵師五姓田芳柳・義松親子の夢追い物語り』(三好企画 2015)などをご覧ください。

※ 『真明解・明治美術』の図録はミュージアムショップで発売中 ミュージアムショップについてはこちら

 まだまだ記したいこともあるのですけれども、もしもし、多くの方から好評だったら第二弾そして続編があるかも!?
 ま、とりあえずは、このあたりで。お付き合いどうもありがとうございましたm(_ _)m

                                         (TT)

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