神奈川県立歴史博物館では、9 月10 日から11 月6日まで、特別展「竹と民具−竹とともに暮らす−」を開催します。私たちが日常生活で使用してきた伝統的な民具の多くは、木をはじめとして竹・藁など生活圏内にある身近な素材を利用して作られてきました。中でも竹はカゴやザルをはじめとし、生活のさまざまな場面で竹の持つ特性を巧みに活かして利用してきました。しかし、生活様式の変化やプラスチック製品の普及によって、竹製の民具の多くが私たちの生活から消えていきました。本展ではカゴ・ザルをはじめ、稈(茎が中空のもの)を利用した道具、節を利用した道具、弾力性を利用した道具など、先人たちが竹の特性を活かして生み出したさまざまな「竹の民具」を紹介し、竹とともに暮らしてきた日本人と竹とのかかわりを見直そうとするものです。
素材としての竹 −竹の特性−
竹は多年生常緑植物のイネ科に属し、比較的集落に接近した場所に一個所にまとまって繁殖している例が多く見られます。そのため、生活圏内という身近な場所で入手できる極めて利用度の高い植物であったことが、日本人と竹との密な関わりを築いた一つの原因であったものと思われます。また、樹木と異なり成長が早いのも竹のもつ特性の一つとされています。筍が成長し、成竹になるまでに要する期間は驚くほど短期間で、わずか3ヶ月ほどで成長しきってしまうとされています。そして、その後はほとんど太くもならず、高くもならないといわれています。
素材としての竹は、いくつかの優れた特性をもっています。先人たちは、その特性を巧みに利用して生活に必要な道具を作り出してきました。その特性とは、
- 真っ直ぐに成長する。
- 茎が中空で(稈という)、節がある。
- 軽いが強靱である。
- 弾力性に富んでいる。
- 割裂性に富んでいて、縦方向に割りやすい。
- 湿度による伸縮が低い。
- 稈の表面は光沢があり滑らかである。
- 堅く耐久性も高い。
おわりに
展示構成は、次の通りです。
プロローグ 「竹の特性」
テーマ1 「竹と衣生活」
テーマ2 「竹と食生活」
テーマ3 「竹と住生活」
テーマ4 「竹と農耕」
テーマ5 「竹と漁撈」
テーマ6 「竹と儀礼・信仰」
テーマ7 「竹と茶道」
テーマ8 「竹が代用する」
テーマ9 「竹と子ども」
テーマ10 「竹と燈火具」
テーマ11 「竹と職人」
テーマ12 「竹と民家」
竹は身近にあり、入手しやすい素材です。本展では、稈・節・皮・枝などを利用した民具や、弾力性・割裂性など竹の持つ特性を活かして作られたさまざまな生活用具を紹介します。また、割る・削る・曲げるなどの加工がしやすいなど、竹の持つ優れた特性を生かした多種多様の「竹の民具」から、先人たちの生活の知恵を感じて頂ければ幸甚です。