瀬戸内海に面した備後(広島県東部)の阿武門観音堂を描く。海にそそり立つ崖の描写に枯淡の味わいがある。この揃物は、広重晩年の竪版風景画大揃物の一つで、全69図に目録1枚の70枚揃い。本図もその一つで、構図としては『山水奇観』淵上旭江画などを参考にした物も含まれるが、巧みにアレンジして仕上げている。