1 鎌倉彫のおこり

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牡丹文大香合
牡丹文大香合

 鎌倉時代、中国から新たに禅宗が伝えられ、都市鎌倉には数多くの禅宗寺院が建てられました。ここで仏像や仏具の制作に携わっていた仏師が、中国からもたらされた堆朱、堆黒などの彫漆器を木彫漆塗の技法で模造したことが、鎌倉彫の始まりであったと言われています。制作に費用や手間のかかる彫漆に比べ木彫漆塗は簡易な技法であり、高価な彫漆器の代替として見た目の似た鎌倉彫は重宝されました。
 鎌倉時代に遡る鎌倉彫の作品は未だ知られていませんが、建長寺や円覚寺など歴史のある鎌倉の寺院には中国風の彫文様の仏具が伝わり、室町時代後半の銘を持つ木彫漆塗の大香合も見られることから、室町時代には鎌倉彫独自の作風が生まれてきていることがうかがえます。