館長の馬車道日記

戦後80年

間もなく8月15日、終戦の日を迎えます。なかには終戦記念日という言い方もされますが、「記念」ではないのではないかと思います。むしろ平和を「祈念」する日であると考えます。そして今年は日本がポツダム宣言を受諾し戦争が終結してから80年ということで、全国各地の博物館で戦争関係の展覧会が、例年よりも多く開催されているようです。そのような中、当館は現在休館中のため展示活動はできませんが、本日当館の武田学芸員による「神奈川県立歴史博物館の戦争資料」と題した講演会が、県民センターで開催されました。
講演の主な内容は、兵士として従軍していた際の記録や日記といった資料から、戦争を読み解いたものでした。同じ部隊の兵士の死、また真珠湾攻撃に参加した兵士による戦況、戦地でのパン作り、宿舎で聞く終戦のニュース、さらに終戦後の収容所の生活など、それぞれの兵士が書き記した記録を紹介しました。ここから何を読み解くのか、50名を超える参加者のみなさんも熱心に聞き入っていました

講演会の様子

さて今年1月24日、神奈川県博物館協会に加盟されている創価学会戸田平和記念館のリニューアルオープンのセレモニーに招待されました。そのセレモニーにおいて昨年ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)で事務局次長をされている和田征子さんが、来賓として祝辞を述べられました。その中で、和田さんが繰り返し強調されたのが「伝える」ことの大切さでした。80年という時間の経過の中で、戦争を体験した人たちが次第に少なくなり戦争の凄惨さと平和への願いを次世代にいかに伝えていくか。これまでニュースなど映像の中で話されている姿は拝見していましたが、直接お話を聞くことで「伝える」ことの重要性を再認識させられました。

博物館は資料を収集し、保管し、そして伝えていくことが使命です。その中には戦争資料も当然含まれ、それを調査・研究し、情報発信しながら後世に伝えていくことは、まさに戦争体験者が自らの体験を言葉として伝えていくことと同様ではないかと思います。

この戦後80年を機に、博物館は資料を残し伝える施設であるということを、あらためて多くの人に認識してもらい、また博物館もその使命を果たす努力をしていかなければならないと強く思った次第です。

令和7年7月31日