館長の馬車道日記

新年のごあいさつ

新年明けましておめでとうございます。
2026年を迎え、21世紀もはや第2四半期に入りました。
みなさまは、どのような新年を迎えられましたでしょうか。

私は、この年末年始が9日間という長期の休みだったということもあり、年末にはどのように過ごそうかといろいろと思いを巡らしてはみたのですが、ふたを開ければ恒例のテレビでの駅伝観戦、家族や親戚との新年会といったように、結局例年と変わらない正月を過ごした感じです。そんなダラダラ生活の中で、今年は『「お静かに!」の誕生 近代日本美術の鑑賞と批評』(2025年 文学通信刊)という一冊の本を読みました。著者は北海道大学大学院文学研究院准教授の今村信隆氏です。今村氏が昨年の全国博物館大会における分科会で、「静かな展示室から排除されるのは誰か―美術鑑賞と美術批評の歴史から考える」というタイトルで報告をされた時から本書が気になり、この休みを利用して拝読した次第です。449頁という大著をこの日記で書評するのは難しいので、簡単に中身を紹介したいと思います。本書は「鑑賞の歴史」と「批評の歴史」の二つを課題としていますが、特に鑑賞については、前近代における見世物鑑賞から、明治になって近代国家が確立する中で美術鑑賞は芸術的教養を享受する手段となり、美術館がいわゆる教育の場となっていったことが指摘されています。いまでも展覧会の会場で会話をしていると「お静かに」と注意を受けることもありますが、一方で最近は美術作品を前にした「対話型鑑賞」といった普及事業も盛んに行われています。そのような現在の博物館・美術館界において、あらためて近代以降における美術作品の鑑賞方法の変遷とその歴史を知るうえで、本書は良書ではないかと思います。詳細は、是非お読みいただければと思います。なお今村氏は別に『「お静かに!」の文化史 ミュージアムの声と沈黙をめぐって』(2024年 文学通信刊)という本も書かれていますので、こちらも近いうちに読んでみたいと思っています。

さて当館も、いよいよ設備改修工事は終盤を迎え、今秋には再開館する予定です。工事と並行して、職員一同再開館に向けてフル稼働で準備を整え、来るべきオープン時にみなさまをお迎えしたいと新年から頑張っています。どうぞご期待ください。

最後になりますが、この一年がみなさまにとって良い一年となりますことを祈念するとともに、なお一層の当館へのご支援をいただきますようお願いいたします。
正月明け、館長室の窓から見る馬車道は、行き交うサラリーマンの中に観光客がちらほらと混じっておりますが、寒空のなか日常が戻ってきている感じです。

令和8年1月5日