展覧会のあらまし
近代化遺産とは?
1990年代以降、日本の近代化の一端を担った工場とその設備や製造物などの産業遺産や、橋梁・ダム・鉄道・港湾施設といった土木・交通遺産を「近代化遺産」と総称し、その保存と活用に関心が向けられるようになってきました。また、2007(平成19)・2008年には、経済産業省が産業史・地域史をベースとした「近代化産業遺産群」を認定するなど、近代化遺産は地域活性化のための重要な資源としても注目を集めています。
キングの塔 ― Tower of KING ―
横浜三塔のひとつ「キングの塔」として親しまれている神奈川県庁本庁舎は、関東大震災後の1928(昭和3)年10月に竣工した四代目の神奈川県庁舎で、本年秋には創建85年を迎える本県でも最もよく知られた近代化遺産(近代建築)のひとつです。スクラッチタイルと幾何学模様の装飾からなる外観は、当時流行していたアール・デコ様式の影響を色濃く感じさせるとともに、建物正面に立ち上がっている「キングの塔」は、帝冠様式建築の先駆的事例とされています。
近代化遺産の宝庫、かながわ
加えて、本県は日本の近代化の過程において、欧米からの文化や技術導入の窓口としての役割を果たした地域でもあったため、横浜・横須賀・箱根など県内各地に現在も多くの近代化遺産が残されている、近代化遺産の宝庫と言うこともできます。
本展では、当館が保管する神奈川県庁本庁舎の実施設計図や部材など初公開資料にもよりながら、現存する県庁本庁舎とそれに先立つ初代から三代目までの歴代県庁舎の歴史をたどり、さらに県内に所在する近代化遺産とその関係資料を紹介することで、かながわという地域の魅力と先人たちの歩みを再認識したいと思います。