館長の馬車道日記

御家人サミット 開催!

春の陽気となった昨日(16日)、講演会「鎌倉御家人サミット 鎌倉御家人について語りつくそう」を開催しました。会場は、神奈川県庁本庁舎の大会議場。現在の本庁舎は昭和3年に竣工した4代目の建物で、令和元年には国の重要文化財に指定されています。

神奈川県庁本庁舎 外観

そして大会議場は、かつての議場であり、天井は格天井で当時のシャンデリアなどもあり、格調高い雰囲気が漂う空間となっています。ここで県議会が催され、さまざまな県政に関わる議論がなされたことを思うと、今回のサミットと称した講演会にとって、まさにうってつけの会場で開催できたのではないかと思います。

大会議場

さてこの講演会では、当館の渡邊学芸員のほか、愛川町郷土資料館の岩田慎平氏、藤沢市生涯学習部郷土歴史課の宇都洋平氏、鎌倉市教育委員会の押木弘己氏、鎌倉考古学研究所の松吉大樹氏の4名の研究者が登壇し、それぞれの専門分野に則した内容で講演されました。
その内容は、まず岩田氏は「武士とは何か」というテーマで、代々の家の武芸を継承し、その立ち振る舞い(身だしなみ)や、相手を納得させる言葉の巧みさを持っていることが理想的な武士の在り方であったのではないかという話でした。次に押木氏は「鎌倉御家人の誕生前夜」として、10~12世紀段階の鎌倉の遺跡から出土した遺物から、すでに馬を利用する集団が居て、かつ京の信仰や文化を受容する一方、身近に武具や馬具を生産する拠点を有するなど、武士団の成長について語られました。そして宇都氏は、鎌倉の若宮大路をはじめとした道路の側溝遺構に着目し、素掘りと木組みの二つの構造から鎌倉のまちづくりの変遷について考える内容でした。また渡邊学芸員は、「武士の本拠とは何か」というテーマで、絵巻物に描かれている武士の居館内における大庭での暴力や獄舎の存在に注目し、見せる暴力とは何かについて考えを話しました。最後に松吉氏からは、「御家人と鎌倉の距離感」をテーマに、当初鎌倉内に屋敷地を構えた御家人も、次第に鎌倉以外の本拠地から鎌倉へ勤仕するようになる者と、逆に鎌倉を拠点とする者に分かれていく様相から、御家人のあり様の変化について話がありました。
もちろん各氏ともさらに様々な話が講演の中に盛り込まれていたのですが、私が興味を抱いた範囲で簡単に紹介させていただきました。

講演後は、全体討論として鎌倉幕府の成立はいつかなど、報告者個々の考えをもとに話が進み、あっという間の3時間でした。もう少し時間があれば、さらに深堀り出来たのではないかと、主催者ながらそれだけが残念に思ったところです。

当日は、約100名という大勢の方にご参加いただき、誠にありがとうございました。またご多忙の中講師をお引き受けいただいた4名の先生方にも、あらためて御礼を申し上げる次第です。

鎌倉幕府、将軍、御家人、鎌倉文化、紛争、交通、流通など、鎌倉時代を考える上でも様々な切り口があるように思います。今後も歴史博物館としては、多方面からこのような課題について情報発信をしていければと思います。

令和7年2月17日

本庁舎は通称「キング」と呼ばれ、「ジャック(横浜市開港記念会館)」、「クイーン(横浜税関)」とともに横浜三塔の一つとして、観光客も多く訪れます。そして当館も屋上のドームを「エースのドーム」と称して、横浜観光の上での一つのメルクマールとして多くの人に愛されています。現在休館で内部には入れませんが、馬車道の交差点から是非ドームを見上げてご覧ください。絶好のフォトスポットですよ。