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天狗とアンバさま−関東の大杉信仰−
 天狗の信仰は修験者の霊場となっている霊山に多くみられ、近くでは相模大山、大雄山、高尾山、筑波山などが知られています。これらの信仰に加えて本展では神奈川県ではあまり知られていない阿波大杉神社(茨城県稲敷市阿波)の信仰をご紹介しています。大杉神社は小高く杉の木に覆われ、外見上は天狗とみまがう「アンバさま」がご神体となっています。アンバさまは病気を治癒したり、あるいは海上安全に御利益(ごりやく)があると信じられていましたので、近郊近在の村々では疫病退散の神、海上安全として崇拝され、その信仰は「アンバ大杉信仰」として今日まで生き続けています。

 出陳されている神面と称する「天狗面」(図6)は、人々が神社から借り受けて、神輿に納めて村中を回り、疫病退散を祈念した際のもので、返す際には新しい面を添えて返すという習俗がみられます。そこには疫病退散、悪霊祓いの神に変身した天狗の存在を垣間見ることができます。また、文久元年(1861)に下総国香取郡小見川村新田(現・千葉県香取市小見川町)の飯森惣右衛門が願主となって奉納した絵馬「難船救済図奉納額」(図7)は海難救助の神への変貌を物語っています。

雲に乗った天狗とおぼしき白髪の老人が、船から荒波の中に投げ出された人を救助しようとしている場面が生き生きと描かれています。老人は天狗を象徴するかのように山伏の恰好で、その背中には雲に乗って飛翔ための羽翼が付いています。
 ほかにも、民間に信仰された天狗さまは2 メートル近くの巨大絵馬をはじめ、神像、御札、郷土玩具、天狗の爪など、そこここに跋扈(ばっこ)しています。どれを見ても興味津々、胸がワクワクするものばかりが登場します。知っているようで謎の多い天狗の魅力を博物館の会場でご堪能ください。