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記念講演会「異文化をまなざすとは?」(「催し物のご案内」記載の9月8日(日)から開催日変更)

国立民族学博物館館長の𠮷田憲司氏を講師にお迎えし、特別展「かながわへのまなざし」の記念講演会「異文化をまなざすとは?」を実施しました。𠮷田氏が過去に企画された展覧会「異文化へのまなざし」展と、「Self & Otherアジアとヨーロッパの肖像」展を軸に、“異文化へのまなざし”について“自己と他者へのまなざし”という文脈の中に位置づけてお話しいただきました。

●「異文化へのまなざし」展

「異文化へのまなざし」展は国立民族学博物館と大英博物館との共同プロジェクトによる企画で、日本では1997~98年に国立民族学博物館と世田谷美術館で開催されました。
この展覧会は、近代にあって、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、日本が、それぞれ相手をどのようにとらえてきたのか、それぞれが抱いてきた異文化観を改めて見つめ直し、従来の西洋中心主義によるまなざしでは未開とされてきたアフリカ、オセアニア、日本のうち、日本は「近代化」をすることで西洋と同じようなまなざしをアフリカ、オセアニアに向けるに至ったことを紹介しています。

●「Self & Otherアジアとヨーロッパの肖像」展

「Self & Otherアジアとヨーロッパの肖像」展は「異文化へのまなざし」展の新たな展開としてASEMUS(アジア・ヨーロッパ・ミュージアム・ネットワーク)が企画した国際共同巡回展です。2008~2009年にかけて国立国際美術館、福岡アジア美術館、神奈川県立歴史博物館、神奈川県立近代美術館(葉山)で開催され、その後、英国とフィリピンに巡回しました。
自己および他者の表象を古今の肖像からたどり、アジアとヨーロッパという異文化を生きる人々が互いに投げかけるまなざしのありようについて問い直すものでした。

また、美術館と博物館という、人々の期待するところの異なる機関で開催されたこの展覧会は、「異文化へのまなざし」展でも課題とした美術館と博物館の区別を改めて問い直す試みでもありました。英語では「ミュージアム(museum)」という1つの言葉を日本では「美術館」と「博物館」という2つの言葉に訳し分けた結果、双方を必要以上に区別し絶対化するようになってきたのではないか、はたして双方に壁をつくる必要があるのだろうか、と𠮷田氏は問います。
本展は巡回展ですが、各館が展覧会のコンセプトを共有しながら、自館の特徴を活かした作品を選び、展示を行ったため、同じ作品を展示していても美術館と博物館では展示方法に違いが見られました。このように美術館と博物館の違いを認めつつ、「協働」の可能性を探ることが本展の目的の1つでした。

さらに本展は、美術館・博物館は資料・作品を「所有」しなければならないという思い込みからの脱却の試みでもあった、と𠮷田氏は言います。
高度に通信と交通が発達している時代に生きている私たちは、長年続いてきた「作品・資料の集積装置としての美術館・博物館」という考え方から脱し、他館からの「借用」で展示を構成するという方向に転換してもよいのではないだろうか。このように美術館・博物館が自ら「所有」することをあきらめた瞬間に、世界全体が収蔵庫になるだろう、と〈フォーラムとしてのミュージアム〉という新しい時代のネットワーク型ミュージオロジー(博物館学)の可能性についてお話しされました。

●「その人のまなざしの刻印」としての肖像画/写真

講演会の後半は、特別展「かながわへのまなざし」で展示されている、幕末から明治にかけてのかながわと外国との接触を記録した絵画や写真についてのお話でした。
ペリーの肖像画を例に挙げ、最初は写実的だったのが、次第に天狗のような顔になっていったのは、描く側(まなざす側)にコレラの流行や開国を容認した幕府への反発があったためだとし、絵画や写真はその場・その時点でのあり様の「記録」である一方、描く側・撮影する側が目の前の現実を切り取った「その人のまなざしの刻印」であり、その人の考えを反映したものでもある、と語られました。

*  *  *

本日の講演内容は博物館をよく利用されている参加者の方にとっても大変刺激的だったようで、質疑応答では質問や感想など発言が相次ぎました。


異文化を見ることは、自らの文化を見つめ直すことでもあります。交錯するまなざしについて、文化人類学者の𠮷田憲司氏にお話しいただきます。

日時 2024年9月22日(日) 午後1時30分~3時30分
※紙媒体の「催し物のご案内」に記載の9月8日(日)から開催日が変更になりました。
講師 𠮷田 憲司 氏(国立民族学博物館 館長)
会場 当館講堂
定員 60名(申込み多数の場合は抽選)
受講料 無料(ただし、当日の特別展観覧券が必要です)
申込 「往復はがき」または「申し込みフォーム」でのお申込みとなります。
※申込時の諸注意はこちらのリンクをご確認ください。
申込締切 2024年8月27日(火)必着
申込受付は終了しました
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