展示

亜米利加船渡来横浜之真図

今月の逸品」では、学芸員が交代で収蔵資料の魅力を紹介します。

2020年2月の逸品(展示期間:~3月1日 ミュージアムトーク:2月19日)

亜米利加船渡来横浜之真図

亜米利加船渡来横浜之真図

作者:渡辺政高ヵ
材質・技法:紙本淡彩
成立年:安政2年頃

かながわの歴史のみならず日本の歴史においてもよく知られるペリー来航の様子を描いた図像を巻子仕立てにした「ペリー来航絵巻」は、ある一つの資料名称ではありません。当館では「亜米利加船渡来横浜之真図」、「浦賀紀行」、「黒船絵巻」など、それぞれ別個の資料名称をもった資料を総称して「ペリー来航絵巻」と呼んでいます。

日本との開国通商を目指した米国は、海軍代将M・C・ペリーに全権を与え日本へ向かわせました。ペリー艦隊は1853年と54年の二度日本へ来航しますが、二度目では松代藩、津山藩、仙台藩などが独自に絵師を含む調査隊を派遣し、ペリー艦隊の動向の把握に努めました。したがって絵巻にはその情報収集活動の成果である、①艦隊の動向、②肖像、③贈り物、④軍艦、⑤葬儀、等の図像が含まれています。そしてそれらの図像は文字情報とともに、藩を越えて共有されていきました。すなわち図像情報の集積物として成立したものが「ペリー来航絵巻」であるといえます。

なお、それぞれの絵巻は、ある一つの絵巻が写し伝えられたものではなく、多種多様に別個に描かれた図像の中から取捨選択され、一つにまとめられています。一本一本の絵巻をつぶさに検討すると、何に関心を払っていたのかを理解することができるでしょう。絵巻を通して、ペリー来航時の様子を具体的に知っていただくとともに、日本の人々が何に注目したのかという見方をすることができます。(嶋村 元宏・当館主任学芸員)

*場面替えを行うため、画像の場面が出ていないことがあります

ページトップに戻る