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第三管区海上保安本部の「横浜港図」(だいさんかんくかいじょうほあんほんぶのよこはまこうず)

ウェブサイトへの記事掲載と常設展示室でのギャラリートークの連動企画「今月の逸品」は、当面の間、ウェブサイトのみでの展開とし、詳しい解説で学芸員おすすめ資料の魅力をお伝えします。

2024年9月の逸品

第三管区海上保安本部の「横浜港図」(だいさんかんくかいじょうほあんほんぶのよこはまこうず)

第三管区海上保安本部の「横浜港図」(だいさんかんくかいじょうほあんほんぶのよこはまこうず)

横浜港図 昭和27(1952)年
寸法:54.5cm×78.7cm
展示場所:常設展2階テーマ5現代展示室
展示期間:9月3日(火)~10月6日(日)

街や海の移りかわり
 私たちが暮らす街は、日々その姿を変化させています。昨日は古い建物があった街角が今日は更地になっていて、数か月後には新しいビルが建っていた―。そのような移りかわりを繰り返しながら、街の歴史は積み重ねられていきます。
 当館が立地する横浜の関内地区は、横浜港に面しています。この一帯では、陸地だけでなく海もまた大きく移りかわりながら現在に至っています。その様子を記録した地図を、当館ではいくつか収蔵しています。それらのなかから、海上保安庁第三管区海上保安本部の「横浜港図」をご紹介しましょう。

第三管区海上保安本部と「横浜港図」
 この「横浜港図」は昭和27(1952)年3月に作られました。第三管区海上保安本部は海上保安庁の地方部局のひとつであり、その本部は横浜に置かれています。海上保安庁は、全国を11の管区に分けて各管区が担当する水域を定めています。第三管区海上保安本部は、首都圏を含む茨城県から静岡県の沿岸海域と、小笠原諸島や沖ノ鳥島、南鳥島の周辺を含む広大な海域を管轄しています。
 本図には川崎市の扇町から横浜市の本牧付近までが示されていて、図中には岸壁や桟橋といった施設のほか、湾内に点在する灯台や浮標(ブイ)などの情報が充実しています。あわせて、川崎や鶴見の埋立地から関内地区にかけての沿岸部では、工場やクレーンなどがイラストで描かれている点が特徴的です。また、それらの間は鉄道を示す赤い線で結ばれています。鉄道が複雑に分岐しながら張り巡らされた様子は、あたかも毛細血管のようです(図1)。
 なお、本図は海を水色で、陸を黄色で塗り分けていますが、これは海図独特の色使いです。図の右下隅には小さな字で「水路部印刷」と記載されていて、本図が海図の作成を担う水路部(現・海洋情報部)によって印刷されたことが分かります。

当館と第三管区海上保安本部
 ところで、図のタイトルには「横浜海上保安部庁舎竣工記念」と記されています。つまり、本図は、新しい庁舎の完成を記念して作られたものであったのです。その新庁舎は、図中の左下に写真で紹介されています(図2)。新庁舎は大さん橋のたもとにありました。また、本図には第三管区海上保安本部の建物も書き込まれています(図3)。当時は横浜港に流れ込む大岡川河口部にありましたが、現在は、近隣の横浜第二合同庁舎内に置かれています。
 お察しが良い方は、お気づきになったかもしれません。第三管区海上保安本部は、当館のご近所さんなのです。そのようなご縁から、当館ではここ数年、同部との連携を深めてきました。今年は、この「今月の逸品」の関連企画として、第三管区海上保安本部との連携によるパネル展示が次のとおり開催されます。9月12日の水路記念日にちなんだものであり、海図を通じて横浜港の移りかわりを知る格好の機会です。ぜひご覧ください。

パネル展示「海図の歴史~第153回水路記念日~」
期間:2024年9月5日(木)〜9月20日(金)
場所:当館1階フリーゾーン廊下(会議室前)

(武田 周一郎・当館学芸員)

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