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神奈川県立博物館の開館

学芸員のおすすめ収蔵資料の魅力を詳しい解説でお伝えする「今月の逸品」。休館中はウェブサイトのみでのご紹介になります。

2025年6月の逸品

神奈川県立博物館の開館

神奈川県立博物館の開館

神奈川県立博物館開館当時の写真
昭和42(1967)年

博物館の誕生日
 突然ですが、皆さんの誕生日はいつでしょうか。誕生日を間近に控えた方、つい先日お祝いされた方、なかには年を重ねたため、この話題は避けたいな・・・という方もいらっしゃるかもしれません。人生いろいろ、誕生日もいろいろ。博物館にもまた、誕生日があります。
 当館の場合、前身の神奈川県立博物館が開館したのは、1967(昭和42)年3月20日のことでした。その後、自然系と人文系の再編整備を経て、1995(平成7)年3月18日に神奈川県立歴史博物館が、3月21日には神奈川県立生命の星・地球博物館が開館しています。
 このうち、県立博物館が開館した頃の写真を通じて、当時の様子をご紹介しましょう。

開館を祝う横断幕
 この写真(画像1)は、開館当時のアルバムにおさめられたもののうちの1枚です。撮影日は不明ですが、開館日である1967(昭和42)年3月20日の前後と推測されます。写真中央の「祝開館県立博物館」という横断幕が、その状況を物語っています。また、横断幕の向こう側には、博物館のシンボルである屋上ドームが写っています。
 横断幕は、県立博物館が位置する横浜・関内地区の馬車道通りに掲げられています。横断幕を下げているアーチは、1964(昭和39)年5月に完成したものでした。この年、馬車道通りにガス灯スタイルの水銀灯と、明治時代の雰囲気をイメージした3基のアーチが設置されています。
 当時、横浜駅周辺が繁華街として急成長する一方、旧来の中心市街地であった関内・関外地区は相対的に活気を失いつつありました。そのような背景のもと、地元の関内商店街協同組合(現・馬車道商店街協同組合)は、歴史と個性を活かした街づくりの取組を展開します。街灯とアーチは、その一環として設置されたものです。

移りかわる街並み
 アーチ以上に出来たてであったのが、屋上ドームです。県立博物館は、旧横浜正金銀行本店本館の建物を使って開館しました。この建物には、1904(明治37)年7月の竣工当時も屋上ドームがありました。しかし、1923(大正12)年9月1日の関東大震災で、屋上ドームと、1階から3階の内装は焼失してしまいます。
 その後、屋上ドームは、しばらく無いままでしたが、県立博物館の開館にあわせて復原された経緯があります。この点を踏まえて、いま一度、写真を見てみましょう。屋上ドームは、復原されたばかりの出来たてほやほやです。そう思うと、心なしか輝いてみえなくもありません。
 ほかの写真からは、当時の街並みが現在とは大きく異なっている様子に気づきます(画像2画像3)。現在まで続く建物や商店が目にとまる一方、残っていないものも少なくありません。また、車道も、現在は片側1車線ですが、当時は対面通行でした。
 先述した横断幕と同様に、お祝いモードがみてとれるのがアドバルーンです(画像4)。現在より建物の高さが総じて低かった当時、アドバルーンは遠くからも目視できたでしょう。私は、これらの写真をみるたびに、県立博物館の誕生日を祝ってくださった皆さんの気持ちと、博物館へ寄せられた期待に思いを馳せています。

(武田 周一郎・当館学芸員)

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