展示

特別展

源頼朝が愛した幻の大寺院 永福寺と鎌倉御家人―荘厳される鎌倉幕府とそのひろがり―

寺銘軒丸瓦 永福寺跡出土 鎌倉市教育委員会

寺鬼瓦・軒平瓦片 神奈川 鎌倉市教育委員会

 鎌倉の二階堂にある国指定史跡永福寺(ようふくじ)跡。かつて源頼朝は、奥州合戦で平泉藤原氏を滅ぼした際に、中尊寺・毛越寺・無量光院をはじめとした北の都の絢爛豪華な浄土世界を目の当たりにし、その文化を鎌倉に持ち帰りました。その結果、文治五年(1189)に臨池伽藍をそなえた大寺院・永福寺を鎌倉二階堂に建立することが計画され、都市鎌倉のなかに浄土世界が体現されました。以後永福寺は、鶴岡八幡宮寺・勝長寿院とならび宗教的権威として鎌倉幕府を支えるだけでなく、その偉容は東国武士たちに対して幕府支配の正当性を文化的側面から見せつける存在でもありました。ところが鎌倉幕府滅亡後の永福寺は、室町期の火災で焼失してしまうと再建されることなく廃絶してしまい、地中にその歴史をとどめることになります。
 しかし、文献史料のみならず、永福寺跡からは往事の壮麗さを示すに余りある考古資料であふれており、鎌倉幕府や鎌倉御家人たちにとって永福寺がいかに重要視されていたかが偲ばれます。本展は、鎌倉幕府の成立とその展開に深く関わった永福寺に注目し、その全貌と軌跡を、文献資料・考古資料・美術資料などの多彩な歴史資料群から複合的かつ立体的に復原していきます。

※ 混雑時は入場制限をする場合があります

永福寺復元CG(湘南工科大学長澤・井上研究室提供)
(重要文化財)大日如来坐像 鎌倉時代 半蔵門ミュージアム

関連動画

神奈川県の動画広報かなチャンTVにて、関連動画を掲載しています。ぜひご覧ください。

特別展「源頼朝が愛した幻の大寺院 永福寺と鎌倉御家人―荘厳される鎌倉幕府とそのひろがり―」展示解説 永福寺と瓦

永福寺と鎌倉御家人展示解説
特別展「源頼朝が愛した幻の大寺院 永福寺と鎌倉御家人―荘厳される鎌倉幕府とそのひろがり―」展示解説 運慶と音楽受容

永福寺と鎌倉御家人展示解説

開催情報

ご来館される前にこちらをご確認ください。

会期・休館日・開館時間・観覧料

■会期:2022年10月15日(土)~12月4日(日)

■休館日:月曜日

■開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)

■観覧料:

区分 特別展・常設展
セット料金
特別展 常設展
一般 1100円
(1050円)
900円
(800円)
300円
(250円)
20歳未満
・学生
700円
(650円)
600円
(500円)
200円
(150円)
65歳以上 250円
(250円)
200円
(150円)
100円
(100円)
高校生 200円
(200円)
100円
(100円)
100円
(100円)

※中学生以下・障害者手帳等をお持ちの方は無料、( )内は20名以上の団体料金
神奈川県立の博物館等の有料観覧券の半券提出により団体割引料金になります。

会場

神奈川県立歴史博物館 1階 特別展示室・コレクション展示室

会場内は撮影禁止です。ご理解とご協力をお願いいたします。

主催

神奈川県立歴史博物館、文化庁

特別協力

国寶史蹟研究会、湘南工科大学、中世瓦研究会、日本女子大学

広報連携

鎌倉国宝館、鎌倉歴史文化交流館、埼玉県立嵐山史跡の博物館、半蔵門ミュージアム、横浜市歴史博物館

助成

令和4年度 地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業

文化庁ロゴ  日本博ロゴ

図録

ミュージアム・ショップのページをご覧ください。

出品目録

出品目録(日本語版)

List of Works(英語版)

関連資料

特別展【永福寺と鎌倉御家人】関連文献リスト

バーチャル永福寺探訪―スマホで永福寺を探検しよう―

特別展会期中(10月15日から12月4日まで)永福寺の復元CGをバーチャルで手軽にスマートフォンで楽しめる無料アプリを公開しています。
博物館内に設置されているアクセスポイントを探して、QRコードを読み込むと、バーチャル永福寺を楽しめるほか、解説を読んだりクイズに挑戦することができます。

「バーチャル永福寺探訪」をApp Storeで (apple.com) iPhone6s以降

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※館内Wi-Fiを使ってアプリをダウンロードすることができませんので、ご自宅でアプリストアからダウンロードしていただくことをお勧めいたします。

永福寺と鎌倉御家人展示解説

展示構成

  • 序章 発掘された永福寺と鎌倉研究
  • 1章 京・平泉の浄土世界
  • 2章 永福寺の偉容と鎌倉幕府
  • 3章 象徴たる永福寺式瓦と鎌倉御家人
  • 4章 東国霊場と鎌倉幕府の荘厳
  • 5章 神さびた中世仮面と音楽文化
  • 終章 武士本拠の景観と復原

序章 発掘された永福寺と鎌倉研究

 鎌倉の二階堂の地にたたずむ国指定史跡永福寺跡。この史跡は、鎌倉市による断続的な発掘調査により、現在その全貌を明らかにすることがかないましたが、その背景に在野の研究者たちの努力があったことはあまり知られていません。戦前から永福寺研究の先鞭をつけた赤星直忠、戦後の保存運動を展開した八幡義生たちにより、永福寺の歴史的意義が“発見”され、今にその存在価値が知られるようになりました。まずは、在野の研究者が主導した黎明期鎌倉研究と永福寺の史跡保存運動のあらましを紹介しながら、永福寺の歴史を繙いていきます。

主な展示資料

赤星直忠考古学研究資料   現代 赤星直忠博士文化財資料館
八幡義生鎌倉遺跡調査ノート 現代 鎌倉市中央図書館
雑誌『国宝史蹟』      現代 個人

赤星直忠考古学研究資料 現代 赤星直忠博士文化財資料館
八幡義生鎌倉遺跡調査ノート 現代 鎌倉市中央図書館
雑誌『国宝史蹟』 現代  個人

1章 京・平泉の浄土世界

 源頼朝による永福寺建立の直接的な動機は、奥州合戦で平泉藤原氏が築いた北の都・平泉の壮麗さを目の当たりにしたためと、『吾妻鏡』には記されています。中尊寺・無量光院・毛越寺など、北のつわものたちは京都の浄土世界を模倣しながら、みちのくに独自の世界を創り上げていきました。本章では、平安後期の京都鳥羽離宮や奥州平泉の寺院群を取り上げ、やがて鎌倉幕府が成立し、浄土世界を体現する永福寺の建立へと至る道程をみていきたいと思います。京との関わりが注目される鎌倉幕府ではありますが、“北からの鎌倉幕府”という視点にもぜひ注目してみてください。

主な展示資料

(京都市指定)鳥羽離宮金剛心院跡出土資料 平安時代 京都市考古資料館
(重要文化財)柳之御所遺跡出土資料    平安時代 平泉町教育委員会・岩手県教育委員会
(重要文化財)無量光院跡出土資料     平安時代 平泉町教育委員会
金鶏山経塚出土品資料 平安時代 東京国立博物館

(京都市指定)鳥羽離宮金剛心院跡出土資料 鴛鴦文金具 平安時代 京都市考古資料館
(重要文化財)柳之御所遺跡出土資料 折敷(人々給絹日記) 平安時代 岩手県教育委員会

2章 永福寺の偉容

 文治五年(1189)、源頼朝は大倉幕府の北東側に永福寺の建立計画を立案し、建久三年(1192)に完成をみます。目的は奥州合戦での戦没供養と謳われ、その偉容は中央に二階堂、左右に薬師堂・阿弥陀堂、加えて惣門・南門・釣殿・多宝塔・鐘楼・僧坊を持ち、臨池伽藍を備えた大寺院でありました。以後、永福寺は頼朝期創建の鶴岡八幡宮寺・勝長寿院とならび、歴代将軍の崇敬を集める三大寺院へと成長し栄華を極めていきます。
 鎮魂の寺院とされる永福寺ですが、そもそもこれだけの偉容とその外観はいったい誰に向けて発信されていたのでしょうか。鎮魂というこれまでの理解を越えた、永福寺の存在意義について考えてみます。

主な展示資料

(神奈川県指定)永福寺跡内経塚出土資料
渥美窯産甕・片口鉢 鎌倉時代 鎌倉市教育委員会
銅製経筒(有蓋)  鎌倉時代 鎌倉市教育委員会
白磁有蓋小壺    鎌倉時代 鎌倉市教育委員会
転法輪抄      鎌倉時代 国立歴史民俗博物館
(鎌倉市指定)関東下知状(神田孝平氏旧蔵文書) 元徳3年(1331) 鎌倉国宝館

銅製経筒(有蓋) 鎌倉時代 鎌倉市教育委員会
白磁有蓋小壺 鎌倉時代 鎌倉市教育委員会

3章 象徴たる永福寺式瓦と鎌倉御家人

 瓦とは権力を象徴するステータスシンボルだった、と言えば多くの方は驚かれるかもしれません。ですが実際には、鎌倉時代の瓦は高価であり、相応の財力(瓦葺の維持など)を必要としたため必然的に使用できる社会階層は限定されていました。
 そうしたなか、永福寺で葺かれていた瓦はその文様が極めて特徴的であり、同寺の存在を外観の面から象徴するアイテムでした。これは永福寺式瓦などと現在は呼称されており、実は東国の鎌倉御家人本拠で同様のものが、北は陸奥国伊達氏から南は伊豆国北条氏にて多数発見されています。御家人たちはなぜ永福寺式瓦を求めたのでしょうか。本章では永福寺式瓦を求めた彼ら御家人たちの心性に迫っていきます。

主な展示資料

下万正寺遺跡出土(永福寺式瓦) 鎌倉時代 桑折町教育委員会
浜川北遺跡出土(永福寺式瓦)  鎌倉時代 高崎市教育委員会
西浦遺跡(永福寺式瓦)     鎌倉時代 埼玉県教育委員会
(埼玉県指定)平沢寺経塚出土 経筒 久安4年(1148) 平沢寺
(埼玉県指定)宮戸薬師堂山経塚出土品 鎌倉時代 朝霞市博物館
利仁神社経塚出土品 建久7年(1196) 東京国立博物館

下万正寺遺跡出土 永福寺式瓦 鎌倉時代 桑折町教育委員会
利仁神社経塚出土品 経筒 建久7年(1196) 東京国立博物館

4章 東国霊場と鎌倉幕府の荘厳

 武家権門としてその立場をスタートさせた鎌倉幕府は、自己の存在を“荘厳”し、正当性を纏わせるようになっていきます。その有様は種々の仏教儀礼の整備に象徴されるように、箱根権現・伊豆山権現などの既存の東国霊場やその宗教秩序に立脚しながら、京都政界から人材を吸収して幕府儀礼を高度化させていくというものでした。その過程で栄西・行勇などの僧侶や、大仏師運慶といった技術者など様々な人材の招聘がなされました。彼らの事跡を通じて、鎌倉幕府も自身の荘厳された姿を東国社会に見せつけるようになっていき、支配の正当性を誇示するようになっていくのです。
 永福寺はまさに鎌倉幕府の荘厳化を象徴する寺院でした。その偉容は建造物をはじめ、瓦や臨池伽藍などの外観から明らかですが、内部の荘厳性も際立っていました。同寺の造像は、鎌倉殿の大仏師たる運慶が担当したと考えられています。現在、真如苑真澄寺が所蔵し半蔵門ミュージアム(東京都)に安置されている大日如来像は、幕府の有力御家人足利氏のために運慶が造ったと考えられるもので、いまは失われた、運慶の永福寺での造像を髣髴とさせる遺品といえましょう。

主な展示資料

(重要文化財)大日如来坐像  鎌倉時代  半蔵門ミュージアム
(重要文化財)鶴岡社務記録  南北朝時代 鶴岡八幡宮
(国宝)當麻曼荼羅縁起    鎌倉時代  光明寺
(重要文化財)頬焼阿弥陀縁起 鎌倉時代  光触寺

(重要文化財)大日如来坐像 鎌倉時代   半蔵門ミュージアム ※展示期間(11月8日~12月4日)

5章 神さびた中世仮面と音楽文化

 荘厳された浄土世界を、人々に分かりやすく伝える手段に音楽があります。音楽は仏教儀礼には必須のものであり、鎮護国家・護国法会の手段として催された音楽をともなう宗教儀礼の整備は、鎌倉幕府が武家権門としての地歩を築いていく上で必要不可欠でした。鎌倉幕府は京都社会から積極的に音楽受容をはかり、永福寺や鶴岡八幡宮寺・勝長寿院は都市鎌倉の音楽文化の中心的役割を担うようになっていきました。そして、これら都市鎌倉の音楽文化は東国へとひろがりをみせ、鎌倉や東国各地に中世仮面が遺されるようになります。本章は中世鎌倉と東国の音楽文化の残滓を示す仮面に着目しながら、音楽の受容と展開の様相に追っていきます。

主な展示資料

菩薩(行道面) 平安時代 日光山輪王寺
(重要文化財)菩薩面    鎌倉時代 鶴岡八幡宮
(重要文化財)舞楽面 陵王 鎌倉時代 鶴岡八幡宮
(重要文化財)弁才天坐像  鎌倉時代 鶴岡八幡宮
(国宝)舞楽曼荼羅供私記〈大山〉 鎌倉時代 称名寺

(重要文化財)舞楽面 陵王 鎌倉時代  鶴岡八幡宮
(重要文化財)弁才天坐像 鎌倉時代  鶴岡八幡宮

終章 武士本拠の景観と復原

 鎌倉幕府によって永福寺で体現された浄土世界。これは地域の支配者にとって必須のツールと認識され、多くの鎌倉御家人の本拠地で模倣されていきました。本展では、永福寺という鎌倉幕府が創り上げた一つの文化的装置が、いかに御家人たちに影響をあたえ、また永福寺の世界観が東国に拡散していったのかをこれまで検討してきました。
 最後に、ここでは近年ホットな神奈川県内の御家人本拠と浄土世界を示す研究成果を紹介したいと思います。一つは三浦氏庶流の佐原氏本拠の満願寺出土瓦群、もう一つは糟屋氏の本拠糟屋荘に関する平安末期から南北朝期にわたる遺構群です。永福寺建立以後、以前にあたるこれら武士本拠の事例から、永福寺研究の今後の可能性をみつめていきます。

主な展示資料

大般若波羅蜜多経     室町時代 髙部屋神社
子易・中川原遺跡出土資料 鎌倉時代 神奈川県教育委員会
神成松遺跡出土資料    鎌倉時代 神奈川県教育委員会

中世寺院跡遠景(子易・中川原遺跡) ※令和3年度子易・中川原遺跡見学会資料より引用

観覧券・招待券表面の文書について

【読み下し】

下す        (花押)(源頼朝)
早く神奈川県立歴史博物館に参集し永福寺の特別展覧会を観覧せしむべきの事、
右件の寺は、鎌倉無双の霊地として、去る建久三年の砌、二階堂として建立せしむるの間、応永十二年の火災により地中に埋もれおわんぬ、今は発掘の成果として整備せらるるところなり、来る令和四年十月十五日、神奈川県立歴史博物館において、且つうは神威増益のため、且つうは所願成就のため、永福寺の特別展覧会を開催し奉るところなり、早く彼の地に参集せしめ、展覧会を観覧すべきの状件のごとし、
 令和四年八月 日

関連行事

  • 講演会「鼎談!黎明期の鎌倉研究を語りつくす」
  • 県博セミナー(全5回)「永福寺から文化と権力を考える」
  • 体験講座その1「永福寺の復元研究とVR体験」
  • 体験講座その2「中世考古学入門-瓦と武士本拠の世界-」
  • 現地見学会「永福寺ゆかりの地を訪ねる」
  • 学芸員による展示解説

※ 関連行事の詳細は、催し物案内をご覧ください。

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